機能強化型在宅療養支援診療所である池上ホームクリニックですが、「機能強化型在宅療養支援診療所」とは、いったい何なのだろう、在宅療養支援診療所と機能強化型と何がどう違うのだろうと疑問に思われているかもしれません。

その説明の前に日本の医療制度がらみのバックグラウンドを少しだけ知ってください。ご存じとは思いますが、日本は皆保険の医療制度になっています。全員どれかの健康保険に加入して保険料を納め、そして医療を受けることができます。病院や診療所も保険適用の医療を提供しています。中には健康保険適用にならない医療もありますがここでは適用になる部分を書きます。

健康保険適用の病院や診療所は自由に医療費を決めることはできません。2年に一度見直される(平成の偶数年)診療報酬に基いて、国から医療費が決められています。医療費の中にはいろいろと基準や条件をつけられるものがあります。「機能強化型在宅療養支援診療所」もそれにあたります。
「機能強化型在宅療養支援診療所」とは自宅で医療を受ける患者さんを自宅を訪問して治療する診療所のことですが、「機能強化型」と「在宅療養支援診療所」のふたつの内容があります。

◆土台となる「在宅療養支援診療所」の部分について

平成18年(2006年)に言葉として初めて登場しましたが、以前より自宅医療のための診療所は存在し治療をしていました。自宅や施設で生活をしながら病気治療を行う患者さんの治療をするための診療所となります。

その基準はこのようなものです。

① 診療所
② 24時間連絡を受ける体制を確保している
③ 24時間往診可能である
④ 24時間訪問看護が可能である
⑤ 緊急時に入院できる病床を確保している
⑥ 連携する保険医療機関、訪問看護ステーションに適切に患者の情報を提供している
⑦ 年に1回、看取りの数を報告している

◆頭についている「機能強化型」について

最新の診療報酬では、平成28年(9月30日まで)に以下の基準を満たしている必要があります。

① 在宅医療を担当する常勤の医師が3名以上配置
② 過去1年間の緊急の往診の実績を10件以上有する
③ 過去1年間の在宅における看取りの実績を4件以上有している

尚平成28年4月から専門の在宅療養支援診療所の場合は、クリアするべき基準が追加されています。

① 在宅患者の占める割合が95%以上
② 5か所/年以上の医療機関からの新規患者紹介実績
③ 看取り実績が 件数)20件/年以上 又は15歳未満の超・準超重症児の患者が10人以上
④ (施設総管の件数・ひと月)/(在総管・施設総管の件数・ひと月) ≤ 0.7(診療所の算定の式)
⑤ (要介護3以上の患者+重症患者)/(在総管・施設総管の件数・ひと月) ≥ 0.5(診療所の算定の式)

◆患者さんにとってのメリット

上記の内容は診療所の設置基準で、設置基準そのものは患者さんにとっては全く関係のない話です。しかしながら、その内容から読み取れることがあります。それをわかりやすく紹介していきます。

1)24時間連絡を受ける体制を取っていて、それに応じて24時間往診および24時間訪問看護が可能:

厚労省、中医協、調査部会の調査によりますと、24時間体勢で連絡ができる、往診、訪問看護が受けられることに95%の患者さんが満足しているという結果がでています。又、その際に主治医が緊急往診した割合は90%を超えていました。入院していたとしても、主治医が緊急時に診てくれるとは限りません。この点は、在宅であっても何の障害もないということがおわかりだと思います。むしろ、在宅であるからこそ安心度合いを強くする必要もあります。

2)常勤医が3名以上いること:

医師の複数バックアップ体制(患者さんの情報共有など)で、患者さんに対しても万全な体勢を取れます。24時間対応の場合、たった一人の医師ではやりきれるものではありません。医師や看護師のワークバランス(仕事だけでなく自己研鑽やプライベートの充実など)も大事です。その上で質のよいベストの医療を提供できます。又、複数の専門を持つ医師がいるということも患者さんにとっても更なる安心材料になることでしょう。

3)緊急時に入院できる病床を確保している:

これは、非常に大事なことです。普段は安定している病状でも急に悪くなることも想定していなければなりません。その時に受け入れ先、すぐに入院できる病床があるということは安心につながります。それは命が繋がるということにもなるからです。在宅医療は連携が大事な医療で、連携病院などの数の多さも大切な点になります。

4)緊急往診数過去1年に10件、看取り4件の経験数:

経験数が多いということは、それだけ経験値が高いこととご理解ください。何の仕事でもそうですが経験値が高いということは質の高さへと導きます。医療だけではなく看護や介護をなさっているご家族の皆さんも満足してもらえるような総合的な在宅医療の提供が必要です。より一層の質の高い在宅医療の提供を受けることができるとご理解ください。

◆まとめ

世界に類をみない超高齢化社会を迎えようとしています。病床の不足、医療者の不足などからくる医療難民を出さないよう在宅医療は推進されています。その時質の悪い訪問診療では困ります。在宅医療に切り替える、必要に迫られている場合は「機能強化型・在宅療養支援診療所」の言葉を思い出してください。病院にいるのと同じくらい質のよい医療であることは間違いありません。